チ。ー地球の運動についてー ラファウの描写から最終章を考察

『チ。ー地球の運動についてー』とは?

15世紀のヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究する人たちの生き様と信念を描いたフィクション作品です。

2020年から2022年にビッグコミックスピリッツにて連載されたマンガであり、2024年10月から2025年3月にNHKにてアニメが放送されました。

作者は『魚豊』(うおと)、アニメ制作会社はマッドハウスです。

2022年に第26回手塚治虫文化賞でマンガ大賞に輝き、各界のマンガ好きの選考員が選ぶ「マンガ大賞」では2021、2022と2年連続入賞を果たしました。

2022年に手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞時の魚豊さんは24歳であり、史上最年少での受賞となりました。

オープニングがすごい

チ。のオープニングはサカナクションの『怪獣』です。

とってもかっこいいのでぜひ見てください!

最終章の内容

最終章は、地動説追い求めた人々を描いた第1章~第3章とは違った内容で、1470年ポーランド王国にてパン屋の手伝いをする青年アルベルト・ブルゼフスキにスポットが当てられます。

彼はかつて「学ぶこと」が大好きだったが、あることをきっかけに学ぶことが嫌いに。

しかしある日、司祭と話をしたことで再び学問の道へ進むことになります。

この司祭と話した内容、つまりは学問を嫌いになったきっかけの回想シーンに第1章で死んだはずである、少年のラファウが青年の姿で登場します。

ラファウ 第1章と最終章の違い

では、第1章と最終章に登場したラファウのどこが違っていたか、整理してみましょう。

  • 年齢
  • 性格

第1章では12歳で大学に合格した神童、最終章では青年(20代、もうすこし若いかも?)の姿でした。

少年ラファウが自死
↓10年後
オクジーとグラスが石箱に出会う。
バデーニの手によりオクジーの本の内容が継承。
↓25年後
刺青をもとに複製された本がドゥラカの手に渡る

ここまでで35年が経過しているため、47歳となりますが、そのようには見えません。

性格については、第1章では知的で合理的で世渡りが上手な、地動説を情熱的に研究する少年でした。しかし、最終章では知的好奇心から人を殺めるほど、好奇心に貪欲で利己的な青年でした。

ラファウの描写から最終章の謎を考察

第1〜3章と最終章を切り離して、パラレルワールドやif世界としたくなりますが、わたしは同じ世界線として考えいます。

なぜなら、ドゥラカの手紙はポトツキの家に届いたし、アルベルトが話した司祭はノヴァクの部下です。最終章の世界で異質なのはラファウだけなのです。

そこでラファウはチがもつ二面性を象徴していると考えます。

地動説が国家ひいては世界をひっくり返す、今までの常識や価値観を一撃で塗り替える衝撃への知的好奇心と知識の継承

ラファウは自ら毒を飲み死にましたが、残した知識は継承されました。

人が悪だと決めたものを暴力的に迫害してきた事実。ノヴァクを見てみるとわかりやすいとおもいます。ノヴァクにとって神の信仰が善で、それに背く地動説は悪となります。ノヴァクもまた自分の信念のもとに命をかけて行動しただけです。

第1〜3章は、中世のヨーロッパで地動説が禁じられ迫害されていたとする史実から構想を得た、フィクション物語。

禁じられ迫害されながらも地動説を研究した人は、こんな信念があり、こんなふうに受け継いでいたかもねという視点と感じています。

そして最終章はアルベルト・ブルゼフスキが天動説に懐疑的だったこと、知的好奇心が旺盛だったこと、彼の教え子のコペルニクスが地動説を唱えたという史実をもとに描かれた現実世界と言えます。

アルベルトが地動説を研究したきっかけは、最終章のように誰かの話す声に対する『?』(好奇心)かもしれないと。

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